2025年12月12
不動産投資の基礎
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2023年10月に施行された「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」は、多くの事業者に影響を与えました。
特に、不動産投資家にとっても無関係ではありません。これまで免税事業者として税務申告にあまり関心がなかった方も、制度の内容や対応策を理解しておかないと、思わぬ損失を招く可能性があります。
本記事では、インボイス制度の概要から不動産賃貸業への影響、さらに取るべき5つの具体的な対応策まで、わかりやすく解説します。
不動産投資に関わる全ての方にとって、有益な内容となるでしょう。
目次(Index)
インボイス制度は消費税の適正な納付と仕入税額控除の正確性を確保するために導入されました。
インボイス制度は、適格請求書発行事業者が発行する「インボイス(適格請求書)」をもとに、消費税の仕入税額控除が認められる仕組みです。
これにより、売り手は国税庁に登録された「インボイス事業者」としての登録番号を請求書に記載しなければならなくなりました。
買い手側も、仕入税額控除を受けるにはそのインボイスを保存する必要があり、事業者間の取引がより厳密に管理されることになります。
これまで消費税の仕入控除が、請求書の保存だけで可能だったのに対し、今後は「適格請求書(インボイス)」の発行と保存が求められるようになります。
適格請求書を発行できるのは、「適格請求書発行事業者」として税務署に登録された課税事業者のみです。
つまり、登録していない免税事業者は、他の事業者に対してインボイスを発行できず、結果として仕入先から敬遠されるケースもあります。

2023年10月にスタートしたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除に関するルールを大きく変えるものであり、不動産投資家にとっても他人事ではありません。
とりわけ商業用物件を所有しているオーナーにとっては、テナントとの契約関係やキャッシュフローにまで影響を及ぼす可能性があるため、慎重な対応が求められています。
以下では、インボイス制度が不動産投資に与える具体的な影響や、免税事業者にとっての判断の分かれ目、そして登録しないことで生じ得る不利益について詳しく解説します。
インボイス制度が施行されたことで、法人や事業者テナントと賃貸契約を結んでいる不動産オーナーは、これまでとは異なる形で税務対応を迫られる可能性が出てきました。
具体的には、法人テナントが家賃を支払う際、支払った消費税分を自社の仕入税額控除として計上するためには、「適格請求書(インボイス)」が必要になります。
このインボイスは、税務署に登録された課税事業者のみが発行可能なため、オーナーが免税事業者である場合には発行できません。
すると、テナント側は自社の経費処理において不利になることから、「オーナーにインボイス発行事業者として登録してほしい」という要望を出してくることが想定されます。
これを断った場合、テナントにとっては実質的に家賃の一部(消費税分)がコストとして跳ね返ることになり、結果として賃料の値下げ交渉や契約の見直しといった不利益な展開につながる恐れがあります。
特に、オフィスビルやテナントビルなど、入居者のほとんどが法人という物件では、インボイスの有無が物件選定の基準にまでなり得ます。
現状では猶予措置もありますが、将来的には免税事業者が市場から排除されるような状況になる可能性もゼロではありません。
したがって、インボイス発行に関するテナントのニーズを的確に把握し、自身の物件が今後も選ばれる存在であり続けるための戦略的な判断が求められます。
インボイス制度が導入されたことで、年間の課税売上高が1,000万円以下の不動産オーナー、つまり「免税事業者」は、課税事業者への登録をすべきかどうかという難しい選択を迫られています。
もともと免税事業者は消費税の納税義務がないことから、インボイス制度導入前は賃貸収入をそのまま受け取り、申告・納税の手間を省くことができていました。
ところがインボイス制度の開始により、法人テナントとの取引を継続するうえで「インボイスを発行できない」ことがデメリットになり得る状況となっています。
実際、賃料の減額要求や契約見直し、さらには解約といった形で投資収益に悪影響が及ぶ可能性が現実味を帯びてきました。
これに対応するため、多くの免税事業者がやむを得ず課税事業者として登録し、インボイス発行を選択しているのが現状です。
一方で、すべての不動産投資家が登録を選ぶべきかといえば、必ずしもそうとは限りません。
たとえば、住宅用物件をメインで運用している場合、家賃収入は非課税となっており、そもそもインボイスが必要とされる場面が少ないため、制度の影響は限定的です。
また、個人事業として少数物件を所有しているオーナーであれば、課税事業者になることで増える事務負担や納税額を避けるため、あえて登録しない選択も十分に合理的といえます。
このように、インボイス制度が与える影響は、投資対象の物件種別やテナント属性、収入構造によって大きく異なります。
免税事業者が登録をするか否かは、単に税金の問題だけでなく、投資戦略全体に関わる重要な分岐点であるという認識を持つことが大切です。
インボイス制度に登録しない、つまり引き続き免税事業者の立場を維持する場合、その判断が後々の経営リスクにつながる可能性がある点にも注意が必要です。
もっとも現実的な影響は、法人テナントからの家賃交渉です。仕入税額控除を受けられない法人にとって、インボイス非対応の家賃は実質的なコスト増となり、長期的には契約の見直しや賃料の引き下げ要請につながる恐れがあります。
実際に、「他の物件ではインボイス対応しているのに、なぜ御社は対応していないのか」と指摘されるケースや、「今後の税務処理を考えると、インボイス発行ができるオーナーと契約を切り替えたい」といった退去要望に発展する事例も出始めています。
こうした動きが加速すれば、免税事業者が所有する物件は競争力を失い、テナント確保が難しくなることも想定されます。
また、不動産の資産価値という観点でも、インボイス非対応の物件は法人向けとしての評価が下がるリスクを抱えることになります。
投資物件としての魅力が低下すれば、売却時の価格にも影響が出る可能性があり、長期的なリターンに悪影響を及ぼすかもしれません。
このように、「登録しない」という選択には、それなりの覚悟と戦略が求められます。
ただし、すべての投資家が無条件に登録すべきというわけではなく、テナント属性や収益構造、自身の事業規模を冷静に分析したうえで、最も合理的な判断を下すことが重要です。
まず最初に取り組むべきは、自身が保有している不動産の種類や賃貸先の性質を正確に把握することです。
住宅用賃貸物件の場合、家賃収入は原則として非課税であるため、インボイス制度の影響はごく限定的です。
個人向け賃貸が主力であれば、制度に伴う税務対応の必要性は低く、従来通りの運用を継続しても大きな問題は生じにくいといえます。
一方、オフィスビルや店舗、倉庫などの商業用物件を所有している場合、その収入はすべて課税売上として取り扱われます。
とくに法人テナントが入居している物件では、インボイスの発行が求められるケースが多く、免税事業者のままでいることが、収益の安定性や契約継続に対する不安要素となる恐れがあります。
そのため、テナント属性(個人か法人か)、契約内容、物件種別を一つひとつ精査し、インボイス制度による影響度を総合的に分析することが、対応の第一歩となります。
加えて、年間の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかも重要な判断材料となります。
超えている場合は自動的に課税事業者となり、インボイス対応が前提となりますが、1,000万円以下で免税事業者として運用している場合は、今後の経営戦略に沿って登録の有無を決める必要があります。
短期的なキャッシュフローだけでなく、中長期的に見て物件の価値や競争力をどう維持するかという視点も欠かせません。
インボイス制度により、法人テナントとの契約継続や新規契約の獲得に支障が出るリスクが明確になった場合、免税事業者から課税事業者への転換を検討する必要があります。
とくに、物件の売却を将来的に予定している場合には、買主側からインボイス対応状況を確認される可能性が高く、制度対応の有無が評価材料になることも想定されます。
こうした点を踏まえ、「適格請求書発行事業者」として登録するか否かを慎重に判断しましょう。
登録の手続き自体は比較的簡易ではありますが、その後に発生する事務対応や税務管理の煩雑さは軽視できません。
インボイス対応の請求書発行体制を整える必要があり、消費税の計算・申告、納税、帳簿の保存義務などが発生します。
これらを適切に処理するためには、税務知識を持つパートナー、特に税理士の存在が重要になってきます。
事業規模が大きくなればなるほど、専門家の助言を受けながら運用体制を整えることが、トラブルを回避するための有効な手段となります。
また、登録にはある程度のリードタイムがあるため、必要と判断した場合は早めのアクションが望まれます。
制度開始直後である今は、テナントや関係者も一定の猶予期間として柔軟な対応を取っている場合がありますが、この猶予が過ぎれば、対応の遅れが競争力の低下に直結するリスクが高まります。
したがって、「まだ様子を見る段階」とはせず、物件と契約先の現状をもとに、早期の意思決定を行う姿勢が求められます。
インボイス制度に対応して課税事業者として登録した場合、最大の変化は「消費税の納税義務が発生する」という点です。
これにより、今まで家賃収入としてそのまま手元に残っていた金額の一部(消費税分)を、期末には納税資金として確保しておく必要が出てきます。
帳簿上の利益が上がっていたとしても、納税資金を分離管理していなければ、いざ納税時に資金が不足するという事態も起こり得るため、資金繰りの見直しが不可欠です。
たとえば、毎月の家賃入金時に、消費税相当額(現行税率であれば家賃の約10分の1)を事業用口座とは別の納税専用口座に移しておくといった運用ルールを定めることで、年度末の納税に備えることができます。
こうした管理体制の整備は、見落とされがちではありますが、インボイス制度への対応における最も基本的かつ重要な部分といえるでしょう。
また、物件ごとに発生する支出や控除対象となる費用についても再点検が必要です。
適切な経費計上を行うことで、消費税の納付額を最適化し、キャッシュフローへの影響を抑えることができます。
特に、設備投資や修繕工事のタイミングによっては大きな控除が見込めるため、税理士と連携しながらタイミングや費用配分を調整することで、戦略的な税務対応が可能になります。
このように、単なる制度対応にとどまらず、インボイス制度の導入を機に、税務戦略や資金管理体制そのものを見直すことが、不動産投資を安定的に継続していくうえでの鍵となるのです。

インボイス登録の是非を決めるうえで最初に整理すべき視点は、「年間課税売上高が1,000万円を超えるか否か」「住宅系か事業系か」という物件構成の割合、そして「入居者が個人か法人か」というテナント属性の三軸。
課税売上高が基準を超えていれば強制的に課税事業者となるため選択の余地はないが、1,000万円以下の免税事業者でも法人テナント比率が高い場合は、インボイス発行の可否が賃貸条件や更新交渉に直結する。
したがって、直近の売上実績と空室を含む想定賃料、さらにテナントの入れ替わりを加味した3年分程度のキャッシュフローを試算し、登録の有無でどの程度収益差が生じるかを比較することが重要になる。
課税事業者に転換した瞬間から、家賃に含まれる消費税を預かる立場となり、期末には納税義務が発生する。
これに伴い、請求書フォーマットの整備、会計ソフトのアップグレード、領収書の適格要件確認といった事務が不可避。
さらに、税理士報酬や会計ソフト利用料を含む年間コストが増えるため、試算では「税理士費用+システムコスト+納税額」を営業費用に上乗せしておく必要がある。
こうした費用負担を反映させた実質利回りが、免税事業者のまま得られる収益を下回る場合は、登録を見送る合理性も残る。
インボイス対応の有無は、物件売却時の査定や金融機関の評価にも影響し始めている。
法人の買主は消費税控除を前提にキャッシュフローを計算するため、非対応物件は想定利回りが悪化し、結果として提示価格が下がる可能性がある。
また、銀行によっては「インボイス発行体制=ガバナンスの裏付け」とみなして審査を進めるケースが増えており、登録していないことで融資条件が厳しくなる事例も報告されている。
短期売却を計画している、あるいは将来的に追加融資で資産拡大を狙う投資家は、登録を“事実上の必須条件”と捉えたうえで戦略を立てたほうが得策だ。
制度開始以降、法人テナントは賃料に含まれる消費税の控除可否をより厳しく確認するようになった。
かつては立地や賃料水準、地震リスクなどが主要な選定基準だったが、今では「オーナーがインボイス発行事業者かどうか」が加わり、物件選定のフィルターが一段厳格化している。
とくに多店舗展開するチェーン系企業は、経理処理を平準化させる目的で非対応オーナーを敬遠する傾向が強まっており、対応していない物件は最初の検討リストから外されるケースも珍しくない。
一方で、課税事業者として適格請求書を発行できる物件は、法人テナントにとって税務上のメリットが明確なため、同条件下で優先的に選ばれる。
結果として空室期間が短縮し、更新交渉でも賃料を維持しやすい傾向が見受けられる。
市場が価格調整局面に入っても、インボイス対応物件は下落幅が小さく、長期的な安定収益を実現しやすいというデータも出始めている。
収益不動産の売買仲介現場ではすでに「インボイス発行事業者の登録有無」をレントロールや物件概要に明記するケースが増えた。
買主となる投資法人やREITは、取得後のテナント交流とキャッシュフローをシビアに計算するため、非対応物件にはディスカウント要求を強める傾向がある。
つまり、インボイス非対応は将来的な売却出口を狭め、想定より低い売却価格に甘んじるリスクを高めることになる。
物件の流動性を担保し、出口戦略の選択肢を広げておく意味でも、制度対応はもはや“付加価値”ではなく“必須条件”へと変わりつつある。
「不動産投資 インボイス制度 影響」というキーワードが示すように、制度導入によって多くの投資家が新たな対応を迫られています。
しかし、影響の大きさは物件の種類や賃貸先の属性によって異なるため、正確な情報をもとに冷静な判断を行うことが大切です。
重要なのは、「制度に振り回される」のではなく、「制度を前提に戦略を練る」視点です。
税務上のリスクと実務対応のバランスをとりながら、今後の投資戦略にどう活かしていくかを考えることが、長期的な不動産運用の成否を左右するカギとなるでしょう。
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