2022年11月17
不動産投資の基礎
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目次(Index)
不動産投資における利回りとは、物件購入のための投資金額に対してどのくらいの家賃収入が得られているかを示した割合のことです。
あらかじめ利回りを計算しておくことで、投資運用における成果基準となり、運用目標が立てやすくなる、金融商品が選びやすくなるといったメリットがあります。また利回りと一言にいっても、不動産投資には「表面利回り」と「実質利回り」の2種類が存在しています。
一般的に表面利回りのことを「利回り」と呼んでおり、ネットの解説記事における利回りは基本的に表面利回りを指しているケースが多いです。表面利回りは年間の家賃収入と物件価格で割合を算出します。また、年単位の収益を計算するために「年利回り」と称されることもあります。
なお、表面利回りは不動産投資時に発生するコストを含めていないため、実際に運用をスタートさせると必ずといっていいほど投資効果が低くなってしまいます。あくまでも、物件の状況を把握するための指標として用いるのが賢明です。また、表面利回りの高い物件ほど大きな投資効果が得られますが、同時に失敗するリスクも高いとされています。
一方、実質利回りは全体の収益から運用時にかかったコストを差し引いた金額で計算します。そのため、実質利回りは表面利回りよりも正確に収益を把握できます。不動産投資における表面利回りと実質利回りについては、立地条件や物件の状態によって相場が異なります。
例えば、東京都心部にある区分マンションで築20年程度なら表面利回りは5.5%前後、築20年以上~35年以下であれば7~8%が相場です。また、不動産においては中古物件よりも新築物件の方が利回りが高くなりやすい傾向にあります。というのも中古物件は投下資本にあたる物件価格が安くなるため、その分利回りが高くなるのです。
不動産投資における利回りとして「表面利回り」「実質利回り」以外にも、購入した物件が1年間満室であったと想定した家賃収入で計算を行う「想定利回り」もあります。想定利回りは空室がない前提になるので、購入する物件が「最大の収益がどれぐらいになるのか」を示す指標と考えましょう。計算式は(満室時の年間家賃収入÷物件購入価格)×100で想定利回りを算出することが可能です。
この想定利回りはWeb上のサイトや広告に使われていることもあるので注意が必要です。利回りがよく見えるように想定利回りで算出したり、区分マンションの場合、最も高い家賃収入で計算されていることもあるので、不動産投資物件の利回りは「どのように計算が行われているのか」をしっかり確認することが大事です。
不動産投資の表面利回りの計算方法は(年間家賃収入÷物件購入価格)×100の計算式で割合を求めます。
年間家賃収入÷物件購入価格×100=表面利回り(%)
では、不動産投資を例に挙げて計算してみましょう。
土地代や建物代などを含む投下資本が2,500万で、年間収益が120万円(毎月の家賃収入が10万円)と仮定します。上記の計算式に当てはめると、(120÷2,500)×100となり、年利回りは4.8%であることが分かりました。
(120万円÷2500万円)×100=4.8(%)
不動産投資の実質利回りの計算方法は(年間収入-年間支出)÷投下資本×100の計算式で割合を求めます。
(年間家賃収入-年間運営経費)÷(物件購入価格-物件購入経費)×100=実質利回り(%)
表面利回り同様、不動産投資を例に挙げて計算してみましょう。
物件購入価格が2,500万円で物件購入時の経費として不動産管理会社に支払う管理委託手数料、管理組合に支払う修繕積立基金などが180万円あるとします。年間家賃収入が120万、そして固定資産税や修繕費、仲介手数料などを含む年間支出が15万だとします。上記の計算式に当てはめると(120-15)÷(2500+180)×100となり、利回りは3.9%であることが分かりました。
(120万円-15万円)÷(2500万円+180万円)×100=3.9(%)
実際に新築区分マンション、中古区分マンションを例に不動産投資の利回りと収支をシミュレーションしていきましょう。
大阪府中央区で最寄りが地下鉄中央線・谷町線 谷町四丁目駅まで徒歩6分の新築区分マンションを2,100万円で購入した場合の表面利回り、実質利回りをシミュレーションしてみます。
新築1Kのマンション
大阪市中央区(地下鉄中央線・谷町線 谷町四丁目駅 徒歩6分)
※あくまでシミュレーションのため年間運営経費を管理費のみに設定。
表面利回り、実質利回りは下記になりました。
表面利回り:(108万円÷2100万円)×100=5.1(%)
実質利回り:(108万円-7.2万円)÷(2100万円+200万円)×100=5.3(%)
多くの方が不動産物件を購入する際に、ローンを利用されると思うので、月々のキャッシュフローについてもシミュレーションを行います。金利1.73%で返済期間30年、頭金なし・頭金500万円の2パターンのシミュレーションをしてみます。
90,000-(74,815+7,400)=7,785円/月
90,000-(57,002+7,400)=25,598円/月
中古1LDKのマンション
広島県広島市(広島電鉄宇品線 御幸橋駅 徒歩4分)
※あくまでシミュレーションのため年間運営経費を管理費のみに設定。
表面利回り、実質利回りは下記になりました。
表面利回り:(90万円-1480万円)×100=6.1(%)
実質利回り:(90万円-8.4万円)÷(1480万円+300万円)×100=4.6(%)
中古区分マンションでも、ローンを利用されると思うので、月々のキャッシュフローについてもシミュレーションを行います。金利1.73%で返済期間30年、頭金なし・頭金300万円の2パターンのシミュレーションをしてみます。
75,000-(52,727+14,500)=7,773円/月
75,000-(42,039+14,500)=18,461円/月
2021年4月、10月に一般財団法人日本不動産研究所が調査した「不動産投資家調査」によるワンルームタイプの賃貸住宅一棟の期待利回りは下記になります。
全国の政令指定都市で比較したときに、「東京」は人口が多く賃貸需要があることから資産価値が高くなり、結果的に物件購入価格も高くなるので利回りが低くなっています。
政令指定都市 | 第44回(2021年4月) | 第45回(2021年10月) |
---|---|---|
東京 城南 | 4.2% | 4.0% |
札幌 | 5.5% | 5.3% |
仙台 | 5.5% | 5.3% |
横浜 | 4.8% | 4.5% |
名古屋 | 5.0% | 4.8% |
京都 | 5.2% | 5.0% |
大阪 | 4.8% | 4.6% |
神戸 | 5.1% | 5.0% |
広島 | 5.7% | 5.5% |
福岡 | 5.0% | 5.0% |
不動産投資の物件種別毎の理想の利回りと最低の利回りは下記になります。弊社の過去の取引実績データから算出しておりますので、あくまでも参考情報とお考え下さい。というのも不動産投資は物件種別だけでなく新築・中古、エリアなど、その他さまざまな条件で大きく変わるため一概に言えるものではありません。
物件種別 | 理想の利回り | 最低の利回り |
---|---|---|
新築区分マンション | 5% | 3~4% |
中古区分マンション | 6~8% | 4~5% |
一棟アパート | 8~9% | 4% |
一棟マンション | 6~8% | 3% |
戸建て | 10% | 5% |
そのため、実際どれぐらいの利回りになるのかを調べる際は、楽待・健美屋などの不動産投資ポータルサイトでなるべく条件が近い物件を探して利回りを参考にするのが良いでしょう。
これまでの説明の中でも触れていますが、表面利回りはあくまでもシンプルな収益指標に過ぎません。物件購入時の費用や管理費・修繕費などの諸費用が含まれた実質利回りで不動産物件の購入を検討する方が、実際の収支に近いシミュレーションができます。
楽待、健美家などの不動産投資物件を扱うポータルサイトでもよく「利回り〇%」などのタイトルで物件を掲載されているのを目にされたことがあると思います。もちろん、優良物件の可能性もありますが、「どういう計算で算出しているのか」という視点を忘れずに持っておきましょう。
不動産投資を行う上で利回りは注視するべき点ではありますが、利回りだけで物件購入を検討するのは危険です。高利回り物件は建物の状態が悪い、設備が古い、実は賃貸需要が無いエリアだったなど、何かしらの売れていない事情があります。
購入後に大規模修繕が発生する、空室が続いて家賃収入が入らないなど、自分が想定していなかったリスクが隠れているかもしれません。
Web上の写真では分からないことも多いので、実際に足を運んでエリアと物件を事前に確認しておくことをおすすめします。特に土地勘が無いエリアであれば、自分で調べたり誰かに聞いてみるのも良いでしょう。
不動産投資を行う際に、物件購入時に諸々の初期費用が発生します。内訳としては下記があります。目安としては、購入する物件価格の10%程度と考えておけば良いでしょう。
物件が駅近、立地が人気エリア、建物構造が鉄筋コンクリート造(RC造)など資産価値が高いとされる不動産物件は利回りが低くても購入しても問題ありません。
国土交通省が実施した「平成30年度マンション総合調査」の調査結果でも「駅からの距離などの交通利便性」は入居者がダントツで重視しているポイントであり、特に物件が駅近であることは資産価値が高く価値が下がりにくい要因となるでしょう。
出口戦略とは、購入した物件を買い手に「いつ」「いくらで」で販売するかの計画になります。不動産投資物件は現物資産であるため、基本的に時間経過で資産価値としては下がっていきます。
特に物件購入時よりも売却金額が高くなった時は出口戦略のチャンスとも言えます。しかし、現在まで安定して家賃収入が入っている場合、出口戦略としてこのタイミングで本当に売却して利益を出せるのかは判断しなければなりません。
出口戦略が取りやすいのは人気エリアにある物件になります。住宅・不動産ポータルサイトSUUMOが毎年発表している「住みたい街ランキング」では関東・関西で以下のようなランキングになっています。
順位 | 関東 | 関西 |
---|---|---|
1 | 横浜 JR京浜東北線 | 梅田 地下鉄御堂筋線 |
2 | 吉祥寺 JR中央線 | 西宮北口 阪急神戸線 |
3 | 大宮 JR京浜東北線 | 神戸三宮 阪急神戸線 |
4 | 恵比寿 JR山手線 | なんば 地下鉄御堂筋線 |
5 | 浦和 JR京浜東北線 | 天王寺 地下鉄御堂筋線 |
6 | 目黒 JR山手線 | 夙川 阪急神戸線 |
7 | 新宿 JR山手線 | 千里中央 北大阪急行 |
8 | 品川 JR山手線 | 京都 JR東海道本線 |
9 | 池袋 JR山手線 | 江坂 地下鉄御堂筋線 |
10 | 鎌倉 JR横須賀線 | 草津 JR東海道本線 |
地方の不動産物件は物件購入価格が低いため表面利回りが高い傾向にあります。確かに利回りが高いことで収益性はありますが、都心部よりも人口減少の影響で賃貸需要が低く、入居者がつかないというケースもよくあります。このように利回り以外の投資ポイントも考えることで失敗しない不動産投資の出口戦略につながります。
利回りが低いということは、基本的に資産価値が高い物件のケースが多いです。
そして、資産価値が高い物件は投資用ローンを組む際の金融機関からの「不動産の価値」も高いことが多いのです。投資用ローンを組む時は申込者の返済能力と担保する不動産の価値が審査されて評価されます。
金融機関からの評価が高い場合、低金利でローンを組むことができることがあります。低金利でローンを組むことができれば、低い利回りだったとしてもキャッシュフローが良くなります。
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